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ほの研ブログ - ほの研日誌カテゴリのエントリ

 2017年1月24日、流山市生涯学習センター3Fの市民活動推進センター会議室にて、2016年度 ほのぼの研究所合同研修を開催しました。これは毎年1回通期を総括、次期の展望や運営方法について、確認、討議し合うものです。

 今回は、大武先生、小暮純生山梨大学客員教授、協働事業者(埼玉県のNPO法人きらりびとみやしろ、茨城県の介護老人保健施設マカベシルバートピア、大阪府の有限会社野花ヘルスプロモート)のメンバー、市民研究員、そして千葉大学工学研究科大武研究室の学生、総勢15名が一堂に会しました。
 大武先生の挨拶を皮切りに、早速以下の過密なスケジュールがスタートしました。

 ?午前の部-≪2016年度活動報告1≫
 ?午後の部1-≪2016年度活動報告2≫
 ?午後の部2-≪大武先生2016年度総括、 2017年度及び中期計画≫


大武先生の開会の挨拶


≪2016年度活動報告1≫
 まず、協働事業者のマカべシルバートピアの永田映子さんから、「マカベ゙共想法報告」と題して、2011年のスタートから5年が経過した共想法と、月曜日自由会話の報告がありました。介護老人保健施設という特性上、運営や、テーマ選びに腐心するも、果たして共想法参加最高齢:98歳になられても参加できたり、共想法が楽しくて参加が待ちきれない方がいらっしゃるという喜ばしいエピソードが紹介されました。また、最後に、実施者として、「共想法は普段のおしゃべりと違い、会話の継続を可能にする効果がある」ことを検証できたという、嬉しい報告で結ばれました。

 次いで、昨年夏に協働事業者となった、大阪府岸和田市の有限会社野花ヘルスプロモートの正木慎二さんからは、「のばな共想法」の本格始動に向けての活動報告がありました。近畿圏初の協働事業者として、自らの法人内他業態のスタッフ間との、共想法についての情報共有により、理解を深めることを手始めに、行政への働きかけや、地域との連携に、試行錯誤を重ねているとの報告に、熱いエールを込めた、様々な角度からのアドバイスやアイデアが提供されました。

新規協働事業者野花ヘルスプロモート正木慎二さんとの質疑応答


 きらりびとみやしろの田崎誉代さんからは、「きらりびとふれあい共想法平成28年度の実施報告、課題、今後の計画」と題する発表がありました。開始後6年目に入った、健常高齢者を対象にしたきらりびと共想法をメインに、様々な場面で積極的かつ工夫を重ねて、共想法の実施や普及活動に力を注いでいる活動から、参加者の能力・機能を的確に観察した上で、時宜を得て対応していく柔軟な姿勢に頭が下がりました。また、共想法がより効果的に活かされるための、豊富な経験や技術から導かれた、幾つかの手法や方法に関する提案も挙げられました。

 ≪2016年度活報告2≫
 開始早々からヒートアップアップしたため、やむを得ず時間短縮せざるを得なかった、ランチタイムで英気を養った後、午後の部前半は、市民研究員の田口良江さんの継続コースの報告からスタートしました。
 活動拠点のほのぼのプラザますおにおける継続コースは、共想法に継続参加することで、認知症予防に役立つ生活習慣をつけていただくことが主目的です。また、共想法のより効果的な実施方法についての、検証の場とも捉えられています。活動報告と併せて、長い間に築かれた参加者との信頼関係や協力が、新しい共想法テーマ等実施方法のスムーズなチャレンジに、大いに寄与していると、感謝の念も語られました。そして、今後はさらにコミュニケーションを密にするとともに、「滑舌を滑らかにする」口腔体操等、アンチエージングトレーニングも加えて、より積極的に継続していきたいという抱負も述べられました。

 次いで、昨年11月に実施した「柏の葉公園街歩き共想法」について、市民研究員の根岸勝壽さんから、報告がありました。これは、街歩き共想法実施者養成も兼ねた行事でした。より多くの方々にご参加いただき、理解していただくために、この実施に際してご協力をいただいた、柏の葉ウォーキングクラブとの今後の共同企画に備えて、さらなる連携を図る必要性が述べられました。

 柏市から受託して、夏・秋の2学期開講した柏市認知症予防コミュニケーション体験講座については、講座の一環として実施した、ほのぼのプラザますお周辺の街歩き共想法の動画記録を交えて、市民研究員の松村光輝さん、魚谷茜さんから、報告がありました。認知症予防の必要性や共想法について、3回/学期のカリキュラムで、正確に体得していただくことはなかなか難しく、試行錯誤を重ねました。受講生の評価は概ね良好で、「認知症予防に関して知りたい」というニーズが高いことが、参加者の声から明らかである、との報告がありました。来年度も受託することになった柏市の講座では、これらの経験を活かして、さらに役立つ講座づくりに努めたいものです。

 平成28年度の科学技術振興機構のACCELのフィージビリティスタディとして採択された、大武先生の研究課題「共想法に立脚した会話支援技術の開発と応用展開」の進捗について、そのプログラムマネジャーとしてご尽力いただいている、小暮純生 山梨大学客員教授から、報告していただきました。ACCELとは、戦略的創造研究推進事業で創出された、世界をリードする顕著な研究成果のうち、有望なものの、すぐには企業などではリスクの判断が困難な成果を抽出し、プログラムマネージャー(PM)のイノベーション指向の研究開発マネジメントにより、技術的成立性の証明・提示(Proof of Concept:POC)および適切な権利化を推進することで、企業やベンチャー、他事業などに、研究開発の流れをつなげることを目指すものです。
 共想法が、社会展開に向けて進化していることを認識することができて、期待が膨らんだことでした。

小暮純生山梨大学客員教授によるフィージビリティスタディの進捗報告


 午後の部前半の最後は、大武研究室の上田哲也学生研究員による、鹿児島県出水郡長島町の地域活性化プラン「できるまで帰れません!」共想法の実施報告でした。大型台風襲来にもめげず、共想法を従来の共想法実施対象者のみならず、子育て世代のお母さん達等へもと、長島町の地域特性に応じて共想法を活用して頂くための、若い世代の果敢なチャレンジは、興味深く、頼もしさを感じたことでした。

学生研究員による長島町共想法報告


≪大武先生2016年総括、 2017年度及び中期計画≫
 待ち遠しかったティータイムブレイクは、またまた白熱した議論のため、短くなりましたが、親睦を深めながら、次の時間に十分に備えることができました。そして、大武先生の2017年度の総括と2017年度計画の報告に入りました。
 2016年度活動については、基礎研究、社会実装、基礎研究と社会実装を横断するものとに3分して、具体的事例が示されました。次いで紹介された、大武研究室メンバーの研究課題は、市民研究員が評価協力したものもあり、興味深いものでした。
 また、先刻、小暮客員教授から報告していただいた、ACCEL関連の2022年に至る具体的な中期計画が示され、共想法が認知症を予防する技術として、社会に役立つものとなる可能性を、感じることができました。
 次期、2017年度の計画として、中期計画に向けての情報・知見の整理整頓、データ化、システム化、スポンサー付き実施に向けてのマーケティング機能の強化と試行、各地展開に向けた模範プログラムの策定と試行、共想法資格化に向けた実施者養成のプログラムの策定と試行等、盛りだくさんのプランが提示されました。
 最後に、6月の設立記念講演会や継続コースの実施案の検討、参加者用共想法ハンドブック試作版評価等の後、年来の課題である、「ほのぼの研究所の活動や共想法を、ひとりでも多くの方々に普及させ、認知度を上げ、社会的責任を果たすためには?」、「共に活動をしていただける方々をどのように募るのか?」等についてのブレーンストーミングを行いました。

参加者記念撮影


 今回の研修会は、例年にも増して、共想法の多世代、多エリア展開等の多様化、産・官・学との連携強化、そして、社会的発展への可能性を、強く感じさせてくれたものでした。
 フル稼働して快く疲弊した脳や心身を、おりしも日本画家、後藤純男回顧展開催を祝って、会場入り口ロビーに飾られた多数の生花で、しばし癒しながら、寒中の薄暮、帰途につきました。

市民研究員 長久秀子

クリスマス講演会に続き、16時からさわやかちば県民プラザ1階のレストラン赤坂クープールに会場を移動して、交流会を開催しました。帽子やカチューシャなど、それぞれお好みのクリスマスグッズを身に着けた参加者のいでたちは、クリスマスムードを醸し出すのに一役買っていました。


童心に帰って?参加者もちょっぴりクリスマスのいでたちをして

招待講演をして下さった矢冨先生をはじめ、大武先生、監事、賛助会員、一般参加者、学生、研究員の45名が参加、司会は講演会の担当の研究員の野口さんから、田口さん、田崎さんコンビにバトンタッチされて、気分も新たにリラックモードでスタートしました。

共想法の協働事業者として、長年おつきあいが続いている、NPO法人きらりびとみやしろの理事長 島村孝一様の開会挨拶では、「当初はこれほど長く続くとは想像できなかった共想法の活動だが、現在多くの参加者が継続して楽しんで参加されている」という、嬉しいお言葉をいただきました。


開会の挨拶を下さった きらりびとみやしろ 島村孝一理事長

会場内が和やかになったところで、今回のクリスマス講演会開催に関する記事を掲載して下さった、読売新聞医療ネットワーク事務局 池辺英俊様に、乾杯の音頭を取っていただくと、会場は一気に盛り上がりました。


乾杯の音頭を取って下さった 読売新聞 池辺英俊様

飲み物を片手に、思い思いのケーキやサンドイッチを味わいながら、名刺交換、情報交換をしたり、旧交を温めたりと、世代やフィールドを越えた交流が見られました。共想法の継続コースに長く参加している、当日参加のうち最高齢の女性の取り組みに感銘を受けたという男性が、彼女の席に近寄られて熱心に問いかけられると、「共想法に参加すると、高齢者のメンバーだけでなく、若い学生さんも関わってくれているのが非常に嬉しいし、楽しい」と話されていたのは、とても印象的でした。


まずは、美味しそうなケーキやサンドイッチで…



世代を超えた楽しい語らいのひととき

お腹も気持ちもほっとしたところで、いよいよ自己紹介の時間となりました。今回はお決まりの自己紹介項目に加えて、「笑い・失敗談」のエピソードも紹介するという趣向でした。身の周りに起こったとんでもないできごとが披露される一方、失敗が数限りないため、具体的にエピソードが挙げられなくて困るという方もいらして、笑いが絶えることがない穏やかなひとときはあっという間に過ぎていきました。


「笑い・失敗談」のお題も課された自己紹介

締めの挨拶を、科学技術振興機構の嶋田一義様よりいただき、ご参加の皆様とほのぼの研究所の一層の発展を祈りつつ、交流会は17時半に名残惜しいなか散会となりました。


中締めの挨拶をして下さった科学技術振興機構 嶋田一義様

ご参加いただきました皆様、そして残念ながら叶わなかった皆様とも、次回お会いできることを楽しみにしております。

市民研究員 永田映子

 2016年12月13日(火)13:30から、さわやかちば県民プラザにて、「認知症予防のイロハ」をテーマに、恒例のクリスマス講演会を、さわやかちば県民プラザの後援で開催いたしました。 
 師走に入り、何かと慌ただしい折りでしたが、80名の方々にご参集いただき、さらに、ほのぼの研究所発足当初に取材頂いた方と、読売新聞東京本社医療ネットワーク事務局からの取材陣においでいただいたことは、誠に嬉しい限りでした。
 講演に先立ち、大武美保子ほのぼの研究所代表理事・所長の開会の挨拶に続き、さわやかちば県民プラザ所長淺岡裕様より、ほのぼの研究所の活動に対して、力強いエールを込めた熱いメッセージをいただきました。淺岡様には、ほのぼの研究所の活動に対して深いご理解と、今回の講演会後援のために多大なご尽力をいただきました。


後援して下さったさわやかちば県民プラザ淺岡裕所長の挨拶

  次いで、来賓の、産業技術総合研究所 人工知能研究センター サービスインテリジェンス研究チーム 研究チーム長の西村拓一様より、大武先生の研究活動への賛辞や、ほのぼの研究所に対する期待が述べられました。


来賓の産業技術総合研究所の西村拓一様の挨拶

 招待講演は、東京大学高齢社会総合研究機構協力研究員 セカンドライフファクトリー代表理事である、矢冨直美先生の「認知症に強い脳を作る」でした。
 冒頭での、高齢者の自立度の変化パターンに大きな性差のあることには驚かされましたが、自立度の低下防止や維持に不可欠な認知症予防のためには、それに対する強い脳をつくることが大切だと力説されました。


招待講演の矢富直美先生

 そのためには、まず、健康な脳をつくる、すなわち、脳を老化させないことが必要で、ウォーキングや水泳などの有酸素運動や、βカロテン、ビタミンA、Cやポリフェノールを多く含む抗酸化力のある食品の積極的な摂取が有効であると説かれました。
 さらに、認知症発症前に低下し始めるといわれている機能を鍛える具体的な知的活動を行うことで、脳を強くする必要を説かれました。例えば、エピソード記憶を鍛えるには、日記や家計簿等、思い出して記録すること。注意分割力を鍛えるには、ウォーキングをしながらおしゃべりをする、幾つかの調理作業を並行して段取りよく行う、計算や作業等を時間をきめててきぱきと行うこと。そして、計画力を鍛えるには、プラン作りから始める旅行、新しいレシピづくりやパソコン作業、趣味等を計画立て実行すること。これらが有効な知的活動として挙げられました。


講演に熱心に耳を傾ける参加者

 ここ数年、ようやく認知症予防に関する情報が多くもたらされるようになりましたが、断片的であったり、偏向があったりと、まだ玉石混交の模様で、受け手としては惑わされがちでした。しかしながら、長年にわたり、認知症予防、特に地域における、いわゆる一次予防に関して造詣の深い先生は、ご自身のフィールドワークに基づいた知見や科学的データをもとに、体系的に、かつわかりやすく解説して下さいましたので、難なく理解できて確信につながり、健康長寿の維持のためにすぐに実行に移したいと思いました。また、「使うことが大切。使わないと失われる」(Use it, or lose it approach)説の紹介も心に強く残りました。

 続く基調講演は、大武美保子ほのぼの研究所代表理事・所長の基調講演で、演目は「毎日できる認知症予防-『共想法』」。


基調講演の大武美保子ほのぼの研究所代表理事・所長

 まず、ほのぼの研究所の設立経緯や活動の概要説明がありました。そして市民研究員が出演し、当研究所で自主制作した動画資料を興味深く観ていただきました。認知症予防のためには、食事と運動に加えて、知的活動と社会的交流が必要であること、その基礎となるのが会話です。聞くことと話すことをバランスよく行う会話により、認知機能を総合的に高めることが期待できる訓練方法としての『共想法』を解説しました。
 その後、市民研究員4人による「最近食べたおいしかったもの」をテーマにした『共想法』の実演をご覧に入れました。


「最近食べたおいしいもの」をテーマに[共想法」の実演をする市民研究員

 最後に、さわりだけでも体験していただくことで、『共想法』への理解を深めていただこうと、ご参加の皆様に、隣席の方と2人一組になって、実演と同じ「最近食べておいしかったもの」をテーマに、一人当たり話題提供1分、質疑応答2分の持ち時間と、話す順番を決めた、写真を省略した『共想法』を体験していただきました。当日テーマを伝えるため、事前に写真を用意できないことから、写真があるつもりで想像しながら会話頂きました。これは、単に講演を聴きにいらしていただくだけでなく、実際に体験していただくことで、『共想法』へのご興味をお持ちいただき、実りある時を提供したいという思いを込めての、初めての試みでした。反応が大変気になりました。果たして、多くが初対面同士でいらしたにもかかわらず、10分も満たない間に会場は笑いにあふれ、一帯感が醸成されるのを感じることができました。




年代を問わず、2人一組の共想法体験で熱い会話を交わす会場の皆様
 
 そして、事後のアンケートでは、「コミュニケーションの楽しさが伝わってきた」という嬉しいコメントや、7割以上の方から「実演や体験を通じて『共想法』に参加してみたいと思った」という回答をいただきました。閉会後も話し足りない様子で退室なさる方々を拝見して、安堵したことでした。

 最後になりましたが、この講演会の後援にひとかたならぬお力を賜りました、淺岡裕所長をはじめとするさわやかちば県民プラザの方々に、厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

市民研究員 松村 光輝

新年のご挨拶2017

カテゴリ : 
ほの研日誌 » お知らせ
執筆 : 
NegishiK 2017-1-1 8:00

2017年 酉年
鹿児島県出水郡長島町の野生の鷹

あけましておめでとうございます

 旧年は、2006年に共想法を考案して10年となる節目の年でした。多くの方に支えられ、文字通り、想いを共にし、共に育むことができたことに感謝申し上げます。

 2016年は、「防ぎうる認知症にかからない社会」の実現に向けて、基礎研究、社会実装共に、次の一歩を踏み出す年となりました。
 基礎研究の面では、第一に、千葉大学附属病院認知症疾患医療センターにおいて、軽度認知障害の方を対象とする共想法の臨床試験が始まりました。第二に、千葉大学大学院看護学研究科の先生方が中心に推進する学内プロジェクトの一環で、エンド・オブ・ライフケアにおける共想法の活用が可能であることを、実践を通じて明らかにしました。第三に、共想法を、対面だけでなく、音声や文字列を介して遠隔で実施する実験を試行しました。
 社会実装の面では、第一に、イノベーションにつながる研究を支援する制度である、科学技術振興機構ACCELに、共想法の研究がフィージビリティスタディとして採択され、事業化に向けた企業との連携体制の構築が始まりました。第二に、千葉県柏市から受託し、認知症予防コミュニケーション体験講座を開講しました。第三に、鹿児島県長島町主催の地域活性化コンテスト「できるまで帰れません」に、ほのぼの研究所の学生研究員が参加し、共想法を地域活性化に役立てる手法を検討しました。
 両者を横断する取り組みとして、ロボットベンチャーとして注目を集める、ユカイ工学株式会社に法人賛助会員にご入会頂き、見守りロボットBOCCOの高齢者見守り分野への利用評価実験に協力しました。

 2017年は、2007年に研究拠点ほのぼの研究所を開所して10年となる節目の年となります。本年も、ご参加、ご支援、ご協力、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

2017年元旦
NPO法人ほのぼの研究所代表理事・所長
千葉大学准教授 大武美保子

 5月から実施した第1期に続いて、第2期の「柏市認知症予防コミュニケーション体験講座」を、大武美保子先生を講師として、10月18日、11月15日、29日の3日間開講しました。前回同様、60歳以上の柏市民が対象で、男性7名、女性6名の方々に受講していただきました。
 今期は、初心者向けの講座と位置づけ、共想法体験を通して、毎日楽しくできる認知症予防を実感していただけるよう、座学に加えて、「街歩き共想法」を毎回とりいれました。東武アーバンパークライン沿いにある会場、柏市介護予防センターほのぼのプラザますおを中心としたエリアでの、「沿線の風景の新しい発見」をテーマとして、これまで何気なく見ていた景色、慣れ親しんでいる街並の中にも、新しいことに気づくということに意識をむけて、街歩きをするプログラムでした。

認知症予防に関する座学に耳を傾ける受講者
 
 初回の会場の裏手から、踏切を超えて雑木林までの比較的狭い地域での「新しい発見」としては、「名前のわからない珍しい赤い花」(のちにトーチリリーと判明)や、通りかかる人がほめるほど「きれいに剪定された柘植」、赤く色づいた「はなみずきの実」などが挙げられました。
 2回目は、会場から増尾駅までの商店街を散策しました。以前は何があったか思い出せない「更地」など、この地域の変遷を語る写真が紹介されました。「柏市のマンホールのフタ」の写真には、描かれている柏市のシンボルの説明や柏市で限定配布されるマンホールカードにも話題が及びました
 最終回は、増尾駅に近い踏切を越えて迄の街歩きとなりました。「わずかな実が残されている柿の木」「まっ赤に紅葉したハゼの木」など、普段は見過ごしがちな秋の風景にも出会いました。

会場の横にある赤い実をつけたハナミズキ


秋の日に映える公園の遊具を撮影

 「普段気づかないことに気づくことが大切であり、新しいことを頭の中に書き込み、それを人に伝えることで、記憶機能を訓練することができる。それが認知症の予防につながる」という先生の説明に、参加された方々は真剣に耳を傾けていました。
 どの回も見事な秋晴れに恵まれたため、秋の陽ざしを浴びながら、季節の移ろいを感じつつ、気持ちよく街歩きや写真撮影を楽しむことができたからでしょうか、受講生の事後のアンケートから、「この講座に満足した」「また、機会があれば参加したい」という声を伺うことができて、とても嬉しく思いました。

街歩きの後、お茶を飲みながらアンケート記入


街歩きで新しく発見した話題で共想法を実施

 本講座運営にお力を貸して下さったほのぼのプラザますおのご担当者はじめ、柏市福祉活動推進課の関係者の方々、そして受講生の方々に厚く御礼申し上げます。

市民研究員 魚谷 茜

 

柏の葉公園街歩き共想法

カテゴリ : 
ほの研日誌 » 行事
執筆 : 
TasakiT 2016-12-11 8:00
 今年最後の小春日和になった2016年11月22日(火)、柏の葉公園にて、街歩き共想法を実施しました。これは街歩き共想法の実施人材養成も兼ねたもので、街歩き共想法実践コース、継続コースの参加者、一般企業の方、市民研究員、千葉大学大学院生、20〜90歳代まで、合わせて19名が参集しました。
 千葉県立柏の葉公園は、1999年に開園しました。芝生広場、多種類の樹木林、花壇などで、四季折々の自然を楽しめるほか、日本庭園、総合競技場や、コミュニティ体育館、野球場、庭球場などのスポーツ施設も備えた、45haの、多世代が楽しめる広大な憩いの場所です。

街歩き前の大武先生の挨拶と講話

 柏の葉公園街歩き共想法は、公園センター事務所2階の会議室で、大武先生の、動画資料を用いた共想法、街歩き共想法による認知症予防の仕組みの解説と、その実践についての講話から始まりました。その後、早速、脚力と体調に応じた「健脚」「お散歩」「ゆっくり」の3つのコースに分かれて、街歩きです。案じられた夜来の雨も上がり、紅葉真っ盛りの木々の葉色は、なお一層鮮やかで、心が躍りました。
 今回の街歩きのテーマは、「新しい発見」です。訪れたことのある参加者も多い、馴染みのあるこの公園からも、さらに意識して新しい発見をすることは、脳を活性化することにつながり、意義があるのです。

いざ、散策スタート

 落ち着いた雰囲気の秋咲きのバラ園、紅葉と鯉の泳ぐ池のコントラストが絶妙の日本庭園めぐりを起点に、ゆっくりコースは、紅葉をじっくりと愛で、お散歩コースは、落ち葉を踏みしめながら、ロックガーデン、冒険のトリデ、桜の広場をめぐって公園を縦断、健脚コースは、野球場や総合競技場や東京大学柏の葉キャンパスが臨める郷土の森まで、元気に脚をのばしました。初めて会った方々とも話が弾み、街歩き終了後のティータイムにも、情報交換やおしゃべりがさらに続きました。

多世代で紅葉を愛でながら



ウォーキングクラブメンバーのリードのもと、積極的に歩いて

 散策を楽しみ、それぞれに新しい発見があったことは、コースごとに行われた共想法の話題提供で、大いに読み取ることができました。ゆっくりコースからは、メタセコイアの大木や、紅葉越しの青い秋空等が挙げられました。お散歩コースでは、壊れかけの苔むした趣のあるベンチと枯葉が程よく乗っているベンチの対比など、視点の違いも感じられ、興味深いものでした。健脚コースでは、散策距離が長いこともあり、ハンカチの木やユリノキ、木に絡んだ紅葉した蔦の側にみつけたカマキリ等の自然に加えて、園内外の施設を見渡すことのできる風景等と、話題は多岐にわたりました。

タブレットで撮影した写真の中から共想法で使う話題を選ぶ


「新しい発見」がたくさん提供された共想法

 お天気に恵まれたこともあり、楽しかった約4時間のスケジュールは瞬く間に終了。公園を後にする頃には、秋の日はつるべ落とし、夜のとばりが下り始めていました。
最後になりましたが、今回の街歩き共想法の実施にあたり、ご協力いただきました柏の葉ウォーキングクラブ、一般財団法人千葉県まちづくり公社の方々に、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

市民研究員  根岸 勝壽

 2016年9月14日から1週間、鹿児島県出水郡長島町の地域活性化プラン「できるまで帰れません!」において、千葉大学の学生で、ほのぼの研究所の学生研究員の上田哲也と根本卓也が、長島町にあった共想法の活用を検討すべく、長島町役場保健衛生課のみなさんのご協力をいただき、様々な実施形式を検討しました。

 長島町は鹿児島県最北端に位置し、海と山の景観が共存する美しいまちです。ぶりの養殖の生産量が世界一、温州みかん発祥の地としても知られています。

九州本島と長島をつなぐ黒之瀬戸大橋(手前が長島)
 
 長島町は、総務省から「地方創生人材支援制度」により、地方創生担当として井上貴至副町長が赴任し、地方創生に関する先進的な取り組みを行っている自治体です。

 本企画は、長島町の地域活性化プラン企画・実現コンテスト「できるまで帰れません!」にのっとり行われました。同企画は、大学生などの参加者を募り、町役場が行きの旅費と1週間分の宿泊費を支給し、プランの実現で帰りの旅費も支給いただけるという制度です。

−鹿児島県長島町 http://www.town.nagashima.lg.jp/default.asp
 −できるまで帰れません!(井上副町長のブログ)
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68537755.html


ラッコ教室での共想法

 上の写真は母子教室「ラッコ教室」での共想法の様子です。島外出身の母親の皆さんの会話のきっかけに共想法が活用できないか、と考え企画しました。
 この日の写真テーマは「私の好きなもの」で、お子さんの好きなものの写真についてお話しされる方がほとんどでした。
 はじめは何をするのか、不安に思われたお母さんがたも、育児の様子などについて、最後にはとても会話が弾んでいらっしゃいました。その後のアンケートで「共想法で、普段聞けない他の参加者のお話が聞けましたか?」という問いに対し、参加者全員から「聞けた」という回答をいただくことができました。
 普段は教室に来て、会話することなくお帰りになられる方も共想法で会話のきっかけをつかまれたようでした。

巡回みんなの保健室(小浜地区)での共想法
 
 上の写真は小浜地区での巡回みんなの保健室の1回として、共想法体験を行った時の様子です。巡回みんなの保健室は保健衛生課の健康寿命を伸ばすのに有効な、健康に関するクイズ、運動教室などを行う取り組みです。

 この日の写真テーマは「夏の思い出」、「好きな食べ物」でした。夏の思い出に関して、悲喜こもごも様々な話題で盛り上がりました。
 共想法を運動教室などと組み合わせることで、より認知症予防効果を高めることができる可能性を感じました。

 取り組みの3つ目として、保健師さんの各戸訪問先で共想法を実施しました。
 共想法の会話支援の側面を活かし、保健師さんの聞き取りをより効率的に行えないか、と考え計画しました。訪問形式で行うことで、外出の足がなく交流のきっかけが少なくなっている方にも共想法に参加いただけます。

 保健師さん2名、訪問先の方1名、司会1名で共想法を行い、テーマ「好きな食べ物、場所」についてとても会話が盛り上がりました。普段会話しない分、共想法でたくさん話せて気分が良くなったというお声もいただきました。
 共想法で会話が弾むうちに、不意に生活の苦労などを伺うことができ、健康状態の背景を知ることが出来ました。

 今後も保健衛生課をはじめ、長島町役場との連携で共想法を展開することで、コミュニティの新しいネットワークづくり、会話を通じた健康チェックに共想法を活用していただけるようバックアップをしていきます。

 できるまで帰れません!の取り組みとして、成功のお墨付きをいただき無事帰路につくことができました。
 お世話になった長島町の皆様に改めてお礼申し上げます。
 

学生研究員 根本 卓也

5月31日、6月14日、7月5日の3回にわたり、柏市介護予防センター「ほのぼのプラザますお」にて、大武先生を講師に、 60歳以上の柏市民を対象に「認知症予防コミュニケーション体験講座」が開講され、男性6名、女性9名が参加されました。
初日は、本講座のねらいである、単に知識を習得するだけではなく、「認知症予防の知識を、学び実践するための共想法を体験し、地域に広げていく」意義の解説を含めた、認知症、共想法についての座学の後、研究員による共想法実演で、さらに理解を深めていただきました。
 2日目には、課題として持ち寄った「好きな食べ物」をテーマの写真で、受講者たちが初めての共想法に挑戦しました。美味しそうな話題に、質問も活発に発せられました。「食べ物」は不変のテーマのようです。
 3日目も、まとめの座学に加えて、「近所の名所・お勧めの場所・初めて気づいた場所」をテーマに共想法を実施。社寺、公園、里山、樹木、商業施設等々、色々な角度から話題が提供され、活発な質疑応答が交わされました。

受講生が参加した共想法

講座期間中、受講生は延べ25名の方に、講座で得た見聞を伝え、最近の体験を話題にしたという、課題の結果も得ることができました。伝えた相手は主に家人、友人、知人で、そのうちでもやはり、家人が一番多く、共想法は認知症の予防だけでなく、夫婦、家族、円満にも役立ちそうに思えました。
 なお、本講座運営におきましては、ほのぼのプラザますおのご担当に大変お世話になりました。ありがとうございました。

 2016年度秋学期の同体験講座は2016年10月18日、11月15日、29日(火)に予定されています。関心をお持ちの多くの方のご参加をお待ちしております。
以下のページに詳細情報があり、参加申込できます。
2016年秋学期 柏市認知症予防コミュニケーション体験講座

市民研究員 魚谷 茜

  人工知能学会現場イノベーション賞は、実生活やビジネスの現場における実問題に関して、人工知能技術により解決した事例を学会として評価した上で、その研究開発を遂行した個人や団体を表彰するものです。NPO法人ほのぼの研究所は、「認知症予防を目的とする会話支援技術『共想法』の開発と超高齢社会における実用化」について、2015年度人工知能学会現場イノベーション賞銀賞を受賞しました。以下が受賞理由です。

   現在の高齢社会において認知症の克服は、社会的緊急課題となっている。受賞者は人工知能技術がその解決策となる可能性を示し、かつ一般市民による参加型手法により認知症克服を実践した。具体的には、認知症の予防を目指した会話支援技術「共想法」を開発し、そこでの認知機能の積極的な活用により、認知症予防の手段を提供した。そして、共想法支援システムを開発し、高齢者が参加するサービスを通して得られた知見を基に方法を改良しつつ、共想法プログラムを展開してきた。共想法では参加者が「市民研究員」として実践研究者になるという特長があり、得られた知見を市民研究員が人工知能学会全国大会近未来チャレンジセッション「認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学」において報告を行っている。その結果、当該セッションは高い評価を得て、修了認定を受けている。このような人工知能技術の社会的課題への適用と実践的な活動により、認知症の克服という課題解決へ大きく貢献したことを評価し、現場イノベーション賞銀賞を授与いたします。

  表彰式は、2016年6月24日に開催されました。

NPO法人ほのぼの研究所代表理事・所長
大武美保子



人工知能学会現場イノベーション賞受賞

2016年ほのぼの研究所設立記念交流会

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ほの研日誌 » 行事
執筆 : 
ShimizuK 2016-7-24 8:00
 設立記念講演会終了後、さわやかちば県民プラザ1階のレストラン赤坂クーポールに場所を移して、交流会が開かれました。参加者55名の楽しい交流の模様をお知らせしましょう。予定より少し遅れて、元気な田崎研究員の司会でいよいよスタートです。
 まず、ほのぼの研究所代表理事 大武先生がご来場の御礼の後、様々な分野の20代から90代までの参加者同士、ひとりでも多くの方に声をかけるというチャレンジをしてほしいこと、またほのぼの研究所は高齢者以外の方々にも広く門戸を開いているので、多世代の方々から参加方法やチャレンジしてみたいことについての提案も大歓迎と、開会の辞を述べました。
 次に、ユカイ工学株式会社代表の青木俊介様より、来賓のご挨拶を頂きました。もとより個人賛助会員として大武先生の研究に興味を持たれ、サポートしていただいておりましたが、自社で開発されているロボットを共想法の社会実装に役立てられるのではないかと、最近、法人賛助会員となられたこと、また、法人会員の特典のひとつでもある評価調査に、市民研究員が携わった事例も紹介していただきました。


法人賛助会員 ユカイ工学株式会社代表 青木俊介様

 続いて、ほのぼの研究所の長谷川副代表理事が、設立以来10年近くを経て、「ふれあい共想法」が、社会参加を加味した新しい形「街歩き共想法」を生み出したこと、活動を通じて90歳をこえても元気であることへの感謝の意を述べ、一同の健康と、ほのぼの研究所の発展を祈念して乾杯の音頭をとりました。


乾杯する参加者達

 しばらく、歓談しながらのティータイムを楽しみ、和やかな雰囲気になった頃、恒例の自己紹介タイムに入りました。「街歩き共想法」のデモンストレーションにご協力いただいた、トップバッターの柏の葉ウォーキングクラブのメンバーからは、楽しそうな活動の一端も紹介されました。次いで、2014年コープみらい地域かがやき賞を頂いたコープみらい千葉県本部の方々、賛助会員の方々からは、ほのぼの研究所とのかかわり、初めてご参加の方々からは、共想法へのご興味、市民研究員や大武研究室の面々からはそれぞれの担当業務や研究課題等が披露されました。


多世代交流の輪

 トリの大武先生は、ひとりでも多くの人の認知症予防が可能になるよう、招待講演で飯島先生が紹介されたサルコペニア発症の自己診断基準となる「指輪っか」のような、わかりやすい基準や兆候を、会話の中から早くみつけたいという展望を語りました。


中締めの挨拶 上橋監事

 最後に、ほのぼの研究所監事で柏市議会議員 上橋 泉様から、熱い思いを込めた中締めのご挨拶としていただいた後、威勢のよい三本締めで、まだまだお名残惜しいなか、閉会となりました。

市民研究員 佐藤 和子