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ほの研ブログ - 2022年ほのぼの研究所設立記念講演会

2022年ほのぼの研究所設立記念講演会

カテゴリ : 
ほの研日誌 » 行事
執筆 : 
NagahisaH 2022-8-14 8:00
 2022年7月19日(火)13時30分より、ほのぼの研究所設立記念講演会「人とのつながりで、脳を育む」を、コロナ禍以来一昨年度から継続して継続して採用しているオンライン形式にて開催しました。 
  
 招待講演「生涯健康脳」、基調講演「共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響」、対談「人とのつながりで、脳を育む」、そして今回初めての企画オンライン交流会を加えての4部形式としました。

設立記念オンライン講演会タイトル

  ほのぼの研究所代表理事・所長の開会の挨拶に続き、早速招待講演講師の東北医学スマート・エイジング学際重点研究センター 副センター長、東北大学加齢医学研究所教授の瀧靖之先生に、仙台市からご登壇いただきました。

瀧 靖之先生

 瀧先生は東北大学加齢医学研究所及び東北メディカル・メガバンク機構で脳の MRI画像を用いたデータベースを作成し、読影や解析をした脳MRIは、これまでにのべ約16万人に上り、脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究者としてご活躍です。
「脳の発達と加齢に関する脳画像研究」「睡眠と海馬の関係に関する研究」「肥満と脳萎縮の関係に関する研究」など多くの論文を発表。著書は、「生涯健康脳(ソレイユ出版)」「賢い子に育てる究極のコツ(文響社)」「回想脳(青春出版社)」「脳医学の先生、頭が良くなる科学的な方法を教えて下さい」(日経BP)」始め多数、特に「生涯健康脳」「賢い子に育てる究極のコツ」は共に10万部を突破するベストセラーとなり、海外でも複数カ国語で翻訳本が出版されています 。また、テレビ東京「主治医が見つかる診療所」、NHK「NHKスペシャル」、NHK「あさイチ」、TBS「駆け込みドクター!」など、メディア出演も多数おありです。

招待講演「生涯健康脳」

 招待講演「生涯健康脳」は、投影資料を使用されず、大武所長が瀧先生に以下3つの質問を投げかけ、それに瀧先生が答えられるというQ&A方式で進められました。
Q1)脳は加齢によってどのように変化するのでしょう?
―A1)私達の日常生活を司る機能を持つ脳の体積は10代後半にピークに達し、それから萎縮が始まります。
また、判断する、記憶する、考えるといった高次認知機能は、機能の種類によって若干異なりますが、凡そ 20代後半をピークにゆっくりと衰え始めます。知識の獲得は、もっと遅くまで保たれ、それからゆっくりと落ちて行きます。

Q2)脳の加齢を早めるものには何がありますか?
―A2)生活習慣病の危険因子である:飲酒・喫煙・肥満(特に内臓脂肪型)…慢性炎症を招くものと、鬱等の心的不健康が挙げられます。

Q3脳を健康に保つには、どのような生活習慣が大切でしょうか?
―A3)下記の6つが考えられます。

脳を健康に保つための6つの要件

 以上のように、理解しやすいように、具体的に丁寧に説明して下さいましたので、事後アンケートでは、日常生活に直結する講話だったので、役だったというお声を多くいただきました。

 次いで、大武美保子代表理事・所長が東京、日本橋にある理化学研究所から「共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響」と題して、彼女が考案した会話支援手法「共想法」の説明を行うとともに、共想法を組み込んだ認知的介入プログラム(PICMOR)を用いてランダム化比較試験を実施して得られた研究結果を述べました。

基調講演「共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響」

 まず、瀧先生が脳を健康に保つための6要件として挙げられた、運動、食生活、睡眠、コミュニケーション、趣味・好奇心、主観的幸福感のうち、特にコミュニケーションに着目したこと。さらに、社会的コミュニケーションの多寡などとは別に、認知機能の維持に役立つコミュニケーションの特徴、条件を考え、それらを満たすコミュニケーションができる方法について、研究していることを述べました。

 会話(コミュニケーション)をする場合、相手の話をよく聴き、声の調子を読み取り、思いやり、注意を払い、理解することをで、加齢とともにとともに萎縮しやすいという前頭葉を使うため、脳を健康に保つための要件のひとつととらえられていますが、単なるおしゃべりではそれらが充足されていないこともあるとして、写真を通して想いを共有できる会話支援手法:「共想法」を考案。「共想法」は一連の作業通して「体験記憶」、「注意分割機能」、「計画力」を総合的に使うことで前頭葉をフル活用するコミュニケーションを確実に行うことをめざしたものだと説明しました。

PICMOR

 さらに、その効果を検証するプログラムとして、AIロボットが司会をする共想法を組み込んだ認知的介入プログラムPICMOR(Photo Integrated Conversation Moderated by Robot)を開発。それを用いた、ランダム化比較試験(共想法参加者 対 雑談参加者)から導かれた共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響を以下のように発表しました。
【認知機能に与える影響】
・共想法形式の会話参加者は、雑談に参加した場合と比べて、言語流暢性(言葉を取り出す認知機能)が向上
【脳に与える影響】
・共想法形式の会話参加者は、言語流動性の部位とその他の部位との結合が強くなっている…言葉の意味をよく理解したり、言葉を使って考えを伝えたりすることで、領域間のつながりがよくなる
・共想法形式の会話参加者は、局所(実行機能や記憶に関わる)部位の体積が、参加修了後、雑談参加者と比べて大きかった
・共想法形式の会話参加者は、白色繊維連絡(領域間のつながり)がよい…脳の信号が他の領域に伝わりやすい
 
 最後に、ほのぼの研究所においては「共想法」を通して脳の健康を維持する生活習慣獲得に関する中長期的な観点での研究、理化学研究所では、脳の健康につながるより科学的、厳密な条件を統制したコミュニケーション方法についてのを研究を行っていく抱負を述べ終話しました。

対談「人とのつながりで、脳を育む」

 休憩を挟んでの瀧先生と大武所長との対談では、まず、東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターについては、アンチ・エイジングという名称は加齢を否定することに繋がるので使うことはせず、脳には可塑性があるので、賢く、豊かに、スマートに歳を重ねていくために、基礎研究から臨床研究に至るまで様々な分野、産学連携、社会実装を通じて研究、特に、認知症予防に注力なさっている機関として紹介されました。

 ファッションや身なりを整えることは、楽しく人生を変えていくために気持ちを動かす力が大きい、すなわち行動変容のきっかけになり得るとして、コミュニケーションを向上させたり、自信や外出等の積極的行動を喚起させることが、脳を元気に保つのに大切だと説かれ、ご自身も大変気を遣われていると述べられました。
 「回想について」は、御著『回想脳』で「幸福の自家発電」と述べられているように、ストレスを解消し、過去の回想により主観的幸福感を得られる共に、単に後ろ向きの行動ではなく、その時に関わっている脳の様々な領域が将来のプランニングの時にも関わっていいる大事な領域なので、未来に向かっのポジティブな生きる力をつけるとも説明されました。
 また、子育てに関しても、知的好奇心を認知症予防にも通じる「人生の大きなドライブ」として大事であると述べられ、それを高めるためには親も知的好奇心をもって積極的に生活していることを示しながら、対象への単純接触効果を高めることが大切だと説かれました。わずか20分間の対談ではありましたが、果たしてに各世代へのスマートな生き方へのアドバイスをいただいたことになりました。

 最後の、今回初企画のオンライン(お茶会兼)交流会は、システム上、ご参加のためにリンク先を変更していただくお手間をかけることとなりましたが、飛び入りも含めて、関東圏はもとより、大阪府、長野県を含めた広いエリアから、また理化学研究所の海外からの研究者を含めた若い世代〜80歳代の多世代、様々な分野の方々に多数ご参加いただきました。
 参加者全員が、氏名、好きなモノ・コト等を語る自己紹介を手際よく行った後、視聴者が瀧先生がドラムを始められた理由と不眠について、大武チームの脳科学の研究者が脳を健康に保つために行う趣味(運動)をする場合、認知的に負荷の少ないことをする場合の効果についての質問がありました。
 多趣味の瀧先生のご自身のご経験も踏まえて、趣味はヴィゴツキーの最近接理論や能動的なものが望ましいことは真理であるが、趣味を持てることの意義やそれから派生するコミュニケ―ションや主観的幸福感等にも意義があるとご回答。不眠についてのアドバイスもいただいたところで終了時刻が迫り、2回に分けて集合写真を撮影して、皆様と画面からお別れとなりました。

 初の交流会については、まだ課題もありますが、これまでの視聴だけとは異なり、双方向で講師と参加者が交流できたことを楽しんで下さったお声が多くあり、安堵しております。いただいたご意見やアドバイスを今後に充分に活かしていきたいと存じます。

 そして、何より研究をはじめ様々な分野で超ご多忙、かつ多趣味の瀧先生には、きっと休憩時間には寸暇を惜しんで筋トレをしていらっしゃったのではないかと想像しつつ、この度の講演会に貴重なお時間とご講話をいただいたことを、心より感謝申し上げます。 
 脳を元気に保つためにすべきことは、決してたやすいことばかりではありません。けれども、ハードルを低く設定してみる、壁を取り払うとできる、やっていく・やってみると意外にできるようになるという、瀧先生から伺った脳の可塑性と信じて、改めて「やってみよう!」「やらなければ!」と元気・やる気・勇気をいただいた方も少なくないと信じております。

市民研究員  長久 秀子 



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なお、当講演会の動画は以下URLにてご覧いただけます。
【人とのつながりで脳を育む】生涯健康脳 瀧 靖之
https://www.youtube.com/watch?v=RwBICMPk4QQ

【人とのつながりで脳を育む】共想法形式の会話が認知機能と脳に与える影響 大武
 美保子
https://www.youtube.com/watch?v=0bGcLhiSbho


【人とのつながりで脳を育む】対談−瀧 靖之×大武 美保子
https://www.youtube.com/watch?v=dSnqCmaQTEE

また、以下でこれまでの講演会の動画もご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/channel/UCz7L-TE_oqgoLORFqNoIoZA/playlists

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