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ほの研ブログ - 柏シルバー大学院D組出前講座実施報告

柏シルバー大学院D組出前講座実施報告

カテゴリ : 
ほの研日誌 » 行事
執筆 : 
NagahisaH 2025-7-20 8:00
 2025年6月9日13時より千葉県柏市柏の葉の東葛テクノプラザ多目的ホールにて、柏シルバー大学院第D組の方々へ「高齢者の認知症予防」をテーマに出前講座を行いました。

 柏シルバー大学院は千葉県生涯大学校を修了した後も、さらに自主的に学習を続け、社会環境の変化に順応する能力を 高め、交遊の輪を広げ、併せて社会活動に参加し、生き甲斐の高揚に資することを目的として昭和56年5月に創立され、学生により自主的に運営されています。在校の皆様は月2日、年間18日(約72時間)の学習のほか、年3回の校外研修及び年2回の合同研修をなどに参加されるなど、まさに生涯学習を全うされている方々です。

 柏シルバー大学院へ出前講座は2024年度にB組、C組の方々へ出講させていただきました。D組からは同年度にご依頼をいただきましたが、日程調整が叶わなかったため、今年度の出講となった次第です。
 今回は、梅雨入り直前のぐずつき気味のお天気にもかかわらず、89名の向学心にあふれた方々がご参集下さいました。講師は大武美保子ほのぼの研究所代表理事・所長が務め、アシスタントとして市民研究員の根岸勝壽、松村光輝、鈴木晃、吉田美枝子が参加しました。

会場の東葛テクノプラザ多目的ホール
 
 以上の3回の出講にて、3クラス約300名の方に共想法による認知症予防について知って頂く機会ができたことになりますことを、ありがたく思います。また、今講座に、D組にご在籍の柏シルバー大学院院長にご聴講いただけたことも、大変嬉しいことでした。

 定刻13時より、開会の挨拶の後、講師側のご紹介があり、早速講話が始まりました。まず聴講の皆様やご家族・周囲の方々の認知症に関する認識や状況等について問いかけながら、認知症の定義を述べた後、人生100年といわれる中、95歳以上の高齢者の約8割が認知症と推計されるという喫緊の課題があることを、伝えました。

 そして、その認知症予防対策として以下の2つを挙げ、詳細を説明しました。
1)生理的アプローチ(認知症の原因の約9割を閉めるアルツハイマー病と脳血管障害を防ぐこと=身体と脳の老化を防ぐこと)➨適度な運動、食事の工夫、充分な睡眠…エビデンスが豊富
2) 認知的アプローチ(たとえアルツハイマー病にかかったとしても、認知症 の症状が出るのを防ぐこと)➨社会生活を送る上で必要であり認知症になると急激に低下するとされている体験記憶、注意分割機能、計画実行機能、言語流暢性といった認知機能を必要とする、知的活動や社会的交流を行い、言語能力を高める)

 併せて、80歳まで20本以上の歯を残すことをスローガンとした8020運動(口腔ケア習慣の徹底)により、55歳〜64歳で歯を失う人の割合が1975年から2005年までの30年間で、20%から2%に減少したサクセス事例を挙げ、認知機能の低下を防ぐために認知機能をバランスよく活用する認知ケア習慣を普及させれば、認知症有病率を劇的に減少させることは夢ではないと、認知症予防対策への展望と意欲を熱く語りました。

 次いで、認知症の症状が出るのを防ぐために生活の中にどのようなことを取り入れたらいいかという観点から、講師が2006年に提唱した、認知症になると低下する認知機能を活用する社会的交流を高い確率で実現するための手法:「共想法」について説明をしました。設定されたテーマに沿った写真を撮影し、時間と順序のルール決めて、話す、聞く、質問する、答えることを行うもの。写真を撮影した時の体験について話題にすることで➨、体験記憶を、写真を見ながら、お互いによく聞き考えな がら、質問することで➨注意分割機能を、決められた時間内に話すことで➨計画実行機能をと、一連の作業を通して活用することになることを説明しました。2018年、NHKEテレに、あしたもはれ!人生レシピ「AIでどう変わる超高齢社会」の回で放映された、会話支援ロボットぼのちゃん司会による共想法の紹介動画を用いて、共想法の流れを御覧頂きました。

共想法実演の様子

 10分間の休憩を挟んで、大武代表理事・所長、根岸、松村、鈴木市民研究員の4人による、ロボットぼのちゃんの司会で、1枚/人の写真に対して、話題提供1分、質疑応答2分の共想法デモンストレーションを観ていただきました。「最近体験した好きなものごと」のテーマに対し、孫の運動会、ヘラブナ釣り、蛍の写真撮影など、それぞれが紹介した、充実した暮らしの一面に関する会話を、興味深く御覧いただけたようでした。

 その後、さらに前述の会話支援ロボットの発話量測定機能等を活用して、理化学研究所にて共想法ランダム化比較試験を実施した結果、介入群には言語流暢性(言葉を取り出す認知機能)が向上するというエビデンスが得られ、MRI検査からも、言語流暢性に関連する脳の領域間や大域的な領野間のつながりがよくなり、記憶機能や実行機能を司る脳の領域の体積が増加する可能性があることが明らかになったと述べました。現在、大阪府岸和田市および埼玉県和光市と、理化学研究所との共同研究で、実証実験が継続されている等、認知症予防の研究の進捗状況を述べました。

 併せて、大武所長の近著『脳が長持ちする会話』について紹介しました。共想法のように、認知機能を活用する性質を持つ会話すなわち脳が長持ちする会話を、日常生活の中で取り入れることを提案するものです。

柏シルバー大学院D組幹事とほのぼの研究所講師、実演者


 講座終了後、主催者の関係者と、講演、実演したメンバーで、集合写真を撮影しました。
 この講座開催に当たり、ご尽力いただきました柏市シルバー大学院の関係者の方々に深く御礼申し上げます。ありがとうございました。

市民研究員 根岸 勝壽

 

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