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ほの研ブログ - 長崎北病院訪問記

長崎北病院訪問記

カテゴリ : 
ほの研日誌 » 旅行記
執筆 : 
TadenumaY 2012-2-19 10:00
2012年1月18日から21日にかけて、長崎北病院に行かれた市民研究員の田口良江さんに訪問記を書いて頂きましたので、ここに掲載します。

【長崎北病院訪問記】
訪問者:大武先生、林(大学院生)、田口(市民研究員)
訪問日程:2012年1月18日〜21日
場所:長崎県西彼杵郡時津町


長崎北病院



玄関に到着

<長崎北病院の見学>
病院に入ると広い待合室があり、天井が高い吹き抜けになっています。見上げると3枚のステンドグラスが明るく輝いています。待合室は時折音楽ホールとなり、音楽会が開かれます。お客様は入院患者さんやご近所の方々でとても評判がよいそうです。


ステンドグラスが迎えてくれます。

病院は建て替えられて4年ほどになり、内科・呼吸器科・循環器科・神経内科・リハビリテーション科・放射線科などがあります。3階から上は主に入院室で1階は受付と各科の診療室、2階にリハビリテーション室があります。建物を順に見学させて頂きました。

特に印象が強かったのはリハビリテーション室で、広いその部屋は一面が広い窓で明るく開放的でした。5~60人の患者さんが機能訓練を受けていましたが、全ての患者さんにマンツウマンで作業療法士さんが付き添っており、充分に目が行き届いているのを感じました。
入院室の前の廊下に<スクエアーステップ>の張り紙があり「・足の踏み出し・バランス転倒予防・認知機能の向上」と効能が書いてあり、入院患者が練習できるように廊下の床にステップのます目が書かれていました。写真はステップを踏む林さん、作業療法士の小砲気鵝扮Α砲販彎何翰士の土井さん(奥)。


ステップを踏む

トイレは左麻痺優先トイレと右麻痺優先トイレがありそれぞれの方が使いやすいように手すりが付いていました。      

<脳リハビリ外来>
ここの「脳リハビリ外来」では、木曜日と金曜日の午後に外来に通う患者さんを対象に、共想法を実施しています。脳トレーニングを早い時期から行うことで症状の進行防止を図るのを目的としています。共想法は個別機能訓練として行われ、医療保険扱いです。
患者さんは病院に着くと、看護師による健康チェックを受けた後、個別に学習療法に取り組み、集団での脳活性化トレーニング、体操、園芸、料理、ゲーム等に参加します。昼食をはさんで午後からは、共想法や絵手紙など、個別の作業療法が実施されます。
作業療法士3名、理学療法士1名、看護師1名、看護助手1名のスタッフが注意深く見守りながらサポートします。
厨房のある明るいトレーニング室には、テーブル2個と肘掛のついた椅子があり、隣には畳敷きの休養室があります。木曜日はこのトレーニング室で、金曜日は会議室で、共想法が行われます。

<長崎北病院における共想法>
患者さんの共想法セッションを見学しました。木曜コース、金曜コース共にテーマは「お正月の遊び」です。スクリーンに向かって参加者がUの字型に席に着き、司会者、副司会者がスクリーン側に左右一人ずつ座り、参加者に向き合う形で進行します。
司会者は「今から共想法をします。白板に書いてある漢字です。」と患者さんにこれからすることを認識してもらいます。
フェイススケールには6つの顔の表情が書かれており、今の自分の気持ちに合う顔を選んで丸をつけてもらいます。プリントが渡されて全員が声を揃えて音読、次に早口言葉の練習をします。発声練習をして、声や言葉が出やすくするのがねらいです。


トレーニング室での共想法の様子



会議室での共想法の様子

先週自分が写真を撮ったのを忘れてしまった人、言葉が上手く出ない人、こだわりの強い人、よくわからないと笑ってごまかす人など、さまざまな特徴のある患者さんですが、司会者・副司会者の助言で言葉が引き出され、話の輪が広がっていきます。参加している仲間の問いかけを聞いて、話を順調に進めていく人もいます。また、先週一緒に取った写真をすっかり忘れた参加者に思いだしてもらうために、スタッフは小道具を会場まで持って行きます。参加者は、自分のテーマの道具を手に取って見ながら説明し、実際に使って見せる方もいます。司会者は共想法が始まるたびに、同じ言葉を繰り返して参加者を促し、時に励ましながら進行していきます。健常者の共想法司会者と大きく違う点です。

<長崎北病院におけるその他のリハビリテーション>
共想法の他、午前中行われた集団で取り組むリハビリテーションを見学しました。平成○年○月○日○曜日に答えるクイズから始まり、大型テレビをスクリーンにして週間天気予報、ニュース、行事(1/23〜1/30長崎ランタンフェスティバル)を紹介します。長崎弁を標準語に・標準語を長崎弁にするクイズや、ラステカ⇒カステラのような文字の並べ替えをしました。これは文字数が増えるとかなり難しくなります。そして、長崎の観光名所を写真で見ました。
見学した日のリハビリテーションは、私たち3人を歓迎してくださるサービスメニューだったようで、楽しく見学させていただきました。


病院の6階の窓から真向かいに見える奇岩「鯖くさらかし岩」



長崎の方言「とっとっと?」「とっとっと!」

その後、体操を一緒にしました。椅子に座ったまま足首を曲げ伸ばし、左右に首を振る運動をします。次に椅子の背につかまって立ち体を反らしたり片足を上げてみる運動は、筋肉をほぐしてリラックス出来ます。体操は少しの場所があれば出来るのを知りました。

昼食は、同じテーブルで患者さんと同じお食事をいただきました。季節の食材を使った献立は薄味の健康食です。里芋のゆずみそあんかけがとてもおいしかったです。ほとんどの方がきれいに食べていました。


患者さんと同じ昼食をいただく

<研究紹介と意見交換>
辻畑名誉院長、外来の看護師長、脳リハビリ外来スタッフの皆さんの前で、大武先生が次世代共想法支援システムを紹介しました。


次世代共想法支援システムの紹介

司会者の大武先生と、遠隔地からの参加者役の土井さんが、B-5版ほどのタブレット端末を持って交信します。今日の共想法のテーマは「好きな動物」、開始日時と経過時間が画面の右手に表示されます。共想法参加者は他に小砲気鵑氾銚、記録者は林さんの構成です。新システムでは、司会者が操作するタブレット端末の画面と同じ画面を、タブレット端末を持った遠隔地の参加者が見て、会話に参加できます。さまざまな地域にいる参加者がタブレット端末を通して一同に介し、共想法を行う夢が現実になるのです。
 大学院生の林さんは『会話における応答特性の分類』について説明をしました。林さんは長崎北病院で行われた共想法の動画の文字おこしデータに基づいて、参加者毎の応答特性を一つ一つ分析し、修士論文にまとめています。大変な作業だったと思います。観察から、いくつかの傾向が見られるそうです。たとえば、会話の反応性は高いが、内容の深い理解までは出来ないタイプ。一つのことに考え込んでしまうので一部の話題にしか反応できないタイプ。いつも同じ話を繰り返すタイプ等です。会話における各タイプは低下した認知機能の種類に関係があるのではないかと考えられるそうです。分類方法については、引き続き議論することになりました。この他、認知症の参加者に対する共想法の効果的な実施方法について意見交換が行われました。


林院生の発表

<長崎卓袱料理と外海観光>
 研究紹介と意見交換の後は、共想法を主に担当している脳リハビリ外来の3人と長崎市内に出て、郷土の名物「長崎卓袱」料理をいただきました。丁寧でおいしいお料理にホッとしたひとときでした。


長崎卓袱料理

最終日の21日(土)は快晴で、午前中、辻畑先生、土井さん、小砲気鵑外海を車で案内してくださいました。初めて見る外海、美しい海岸線の向こうに幾つもの島が見え隠れしています。
ド・ロ神父記念館を訪ねました。「フランス人の神父は1868年(慶応4年)28歳で来日、宣教師としてだけでなく石版印刷技術を伝えるために来られましたが、74歳で亡くなるまでの46年間を日本で過ごし、その間、外海地域の産業、社会福祉、医療、移住開拓、土木、建築、教育文化などに奉仕されました。」と説明を受けて、その幅の広さに驚きを隠せませんでした。そして、神父ゆかりの出津(しつ)教会に立ち寄りました。


出津(しつ)教会

外海を一望できる遠藤周作文学館は、ついゆっくり浸ってしまうほど魅力的でした。氏の作品「沈黙」は此処外海(そとめ)が舞台です。
半日の観光時間はあっという間に終わりました。それでも花より団子で「長崎名物トルコランチ」なる昼食をおいしくいただき、お世話になったご挨拶もそこそこに一路急ぎ時津港へ。時間ぎりぎりの船に飛び乗り、長崎空港に向かいました。
人の温かさに触れ、たっぷり研修させていただいた長崎北病院、ちょぴり観光した長崎外海地区は心に残り、本当に素敵でした。
研修に参加出来た「健康」に感謝しています。
                           田口良江 記

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