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ほの研ブログ - 長崎北病院脳リハビリ外来研修報告

長崎北病院脳リハビリ外来研修報告

カテゴリ : 
ほの研日誌 » 旅行記
執筆 : 
ShimizuK 2013-6-23 10:00
2013年3月12日から14日まで2泊3日の旅です。研修は13日、朝9時から夜7時まででした。参加メンバーは大武先生、千葉大学4年生の山口健太さん、動画を撮影する志茂さん、記録担当の田口です。

研修日3月13日(水)強風で大雨、気温19℃ <長崎は今日も雨だった>

研修目的は、軽度認知症の方を対象とする共想法の効果的な実施方法を検討するために、脳リハビリ外来に通院する、患者さんと実施者の一日を動画記録に撮ることです。午後は軽度アルツハイマー型認知症で脳リハビリ外来に通う女性2名、男性1名、合計3名の患者さんが参加する共想法の撮影があります。強風雨の中、10名近い患者さんが集まりました。
9時30分から12時迄、午前中のリハビリです。



パソコンに取り込んだ桃の花を題材に患者さんと話し合う小縫好織奪


看護師さんから血圧の測定を受け、計算ドリル、次に作業療法士さんの合図で発声練習、音読、早口言葉を全員で唱和します。2グループに分かれ、片方は椅子に腰かけたまま体操をするグループです。もう片方はパソコンに取り込んだ写真を見て話し合うグループで、回想法をします。休憩のあと、夏目漱石作「三四郎」の部分を音読、スタッフの解説と質問で患者さんと問答して理解を深めます。午前中のみリハビリへ参加する患者さんは昼前に帰宅、午後から共想法または脳トレに参加する患者さんは、テーブルを囲んで昼食です。



全員が声を揃えて発声練習をします。担当は岩下スタッフ


朝一番、志茂さんはカメラの位置を確かめ設置して、早速撮影にかかります。患者さんに刺激を与えないように姿勢を低くしての撮影です。
 患者さんは全体に静かで、大声を出すなど他の方の迷惑になるような方はいません。発声練習の「音読」「早口言葉」ではスタッフが「ゆっくりでいいからはっきり読んでください」と言います。活舌をよくする練習は声がよく揃っていました。「今日は何年何月何日何曜日でしょうか」はとても大事な質問です。
 花を当てるクイズではたまたま花瓶に活けてあったボケの一枝が話題になりました。患者Bさん「ボケの花、名前が気の毒だわ」患者Cさん「この頃は(認知症を)ボケといわないのよ」患者Bさん「それでも名前が気のどく」とボケの花の名前にこだわっていました。

2時からは、3人の軽度アルツハイマー型認知症患者さんが参加する共想法です。ロボット研究員ぼのちゃんも飛び入り参加します。



1週間前に撮った写真の小道具をのせたワゴン


司会者の阿南さんが手早くパソコン、プロジェクター等の準備を完了。記録者と副司会者を兼ねる小砲気鵑、小道具を乗せたワゴンを引いて部屋に来ました。補助司会者の岩下さんが参加者3名と入室します。ぼのちゃんの担当は山口さんです。見学は名誉院長の辻畑先生、大武先生、田口です。
共想法が始まる前に司会者が必ず参加者に伝える言葉があります:「これから共想法をします。共に想うと書きます。みんなと一緒に想い合う、撮った写真を見ながら話し合いましょう。テーマは日本の行事です。」なお、テーマは毎月変わります。岩下さんの指導で発声練習は音読と早口言葉です。「バッチリ声が出ていましたよ」と参加者を励まします。次のフェイススケールは、にこにこ顔から泣いている顔まで6つ並んでいます。「皆さんは今どのような気持ちですか。あまり考え込まないで自分の気持ちに近い顔の番号に○を付けてください。」と述べ、用紙を回収します。



機材のセッティングをしながら打ち合わせをする阿南さん・小砲気鵝志茂さん


司会者は言います、「今日はお客様が来ています。ぼのちゃん自己紹介してください」。いよいよ共想法開始です。参加者の一人Aさんは聞いてもらいたい話を、唐突に何度も話し始めるので、その都度司会者は「今は○○の話をしていますからね。」ときっぱり伝えます。副司会者は参加者の撮った道具類をワゴンの上から取り出して示します。参加者の間に入った補助司会者は、気配りをして参加者に発言を促し又見守りますが、今日はお客様があり、皆さんのテンションが上がっていることもあって、促しはありません。参加者のBさんは午前中のテレビによるクイズの都道府県問題にもよく答えていましたし、産地の名産品もよく知っていて、ほとんどの場面でリーダーシップをとっていました。そのBさんが共想法の最後に司会者が「月見団子とすすきの写真はBさんが撮りました」と言うと「これ!わたしが撮ったのですか」といいました。「先週撮りましたね」と言われても全く思い出せない様子でした。



患者さんのリハビリ共想法風景


ぼのちゃんの感想を聞かれると、Aさんは「まあまあ」あとのお二人は「可愛かった」「よかった」とのこと。ぼのちゃんのベストを見て「かっこいい。長崎では毛皮はちょっとね。千葉は寒いのですか」とBさん。
一度話しだしたら止まらないBさんは、とくによく話されました。冗談も分かるし認知症の症状が感じられないのです。大武先生が、「どうして認知症がわかったのでしょうか」と聞きましたら「ちょっと気になって外来に行ったそうです」とスタッフが答えてくださいました。
夕食の時、向かい側にいらした名誉院長の辻畑先生に私が質問しました。「私が認知症を心配して病院に行った時に、どのようにして診断されるのでしょうか。」「あなたの日常生活をよく分かっている方が同行されるのがいいでしょう。この頃あなたの日常生活で、以前と違ったことを教えてくださいと聞きます。あなたは変わったことはない、物忘れがあるくらいですと答えるでしょう。同行者がいろいろ気付いたことを言います。あなたはその一言ずつに反論し、否定します。自分を正当化します。これが認知症の特徴です。」なるほど、自分では気が付かないのだと思いました。
実りの多い長い1日研修でした。リハビリとして行う共想法の難しさと、取り組んでいる病院・スタッフの研究熱心さには頭が下がりました。長崎北病院の脳リハビリ外来に通う患者さんは幸せだと思いました。認知症ができるだけ進みませんように願っております。

開花の季節にちょうど重なったので、14日は3時間ほどハウステンボスに立ち寄り、チューリップ畑を見て帰りました。初めて行ったハウステンボスの写真をご覧ください。



晴れて満開のチューリップが見事でした

市民研究員 田口良江記

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